COLUMN

【COLUMN】花巻南温泉郷の四季とkune – 風土を纏い、土地の記憶を巡る旅

こんにちは。kune店主の照井です。4/15をもって、kuneは3周年を迎えることができました。日頃ご愛顧いただいております皆様、そして、この土地で商いをさせていただけることに心より感謝申し上げます。
今回は、改めてkuneという場所が生まれた背景や、お店の位置する花巻南温泉郷の四季の魅力についてご紹介しようと思います。この土地で生まれ育った一人の視点からではありますが、より多くの方に店舗や花巻南温泉郷の魅力が伝われば嬉しい限りです。

kuneについて – 100年前から変わらぬ美しさを、今の暮らしへ

岩手県花巻市内から車を走らせ約30分。奥羽山脈を望む山あいの小さな集落に、築100年の古民家で営むセレクトショップ「kune(クウネ)」はあります。店名は、宮澤賢治も親しんだエスペラント語で「一緒に」を意味する言葉から名付けられました。花巻出身でもある店主照井ですらなぜここで?と質問したくなるこの場所で商いを続ける背景には、オーナーである菊地の一つの原体験があります。

きっかけは、かつて買い付けで訪れたパリでデザイナーのJAN-JAN VAN ESSCHE氏と出会ったことでした。自国の文化について語り合う中で、菊地は「日本古来の衣服の在り方」を深くは知らない自分自身に気づかされたといいます。そこから日本特有の美意識や自然観への探求が始まり、紆余曲折辿り着いたのが自身のルーツである故郷「東北・岩手」でした。

裂織(さきおり)・ホームスパン・刺し子・天然染のような、東北の風土に根を張った手仕事があるということを知っていく中で、布がかつて貴重だった時代に、人々が端切れ一枚すら無駄にせず、「てまひま」をかけて衣服の命を繋いできた文化を強く意識するようになっていきました。

これらは単なる伝統工芸ではなく、寒冷な地で生き抜くための切実な必要性から生まれた、「衣服を長く、大切に使い切る」という極めて純粋な暮らしの中に自然と組み込まれた美しい営みでした。

東京(CONTEXT TOKYO)と京都(乙景)に拠点を持ち、都市部での活動を続ける一方で、花巻の地に根を張ることに決めた理由の一つはここにあります。東北がコツコツと積み重ねてきた「自然への畏敬の念と、物への慈しみの眼差し」は、私たちが理想とし提案したい衣服の在り方。そして現在取り組んでいるリユースの活動とも驚くほど深く共鳴していたのです(リユースの詳細はこちらから)。

東北を巡る思索の旅の中で縁が繋がり出会ったのが、花巻南温泉郷の山あいの小さな集落に100年前から変わらず質実剛健と佇む古民家でした。

厳しい自然と折り合いをつけながら営まれてきた農家の在り方。菊地はその姿そのものに宿る美しさと力強さに惹かれたといいます。この場所から風土とともに生きる暮らしの豊かさを衣服の文脈を通して提案することに決めました。

目指したのは、元々農家であったこの家屋が、かつて季節とともに歩んでいたありのままの姿。厳しい自然と折り合いをつけてきた昔の農家の暮らしに倣い、形を整えていきました。

その静かな空間の中で、東北の古い道具と北欧の家具などが時代や国境を越えて心地よく同居しています。

現在、菊地は地元の裂織の会に参加し、先人たちの技術を肌で学んでいます。過去の遺産として保存するのではなく、この土地に懇々と手から手へと伝えられてきた温もりのある文化を、次の世代へ今のカタチで引き継ぐこと。そのために、私たちはこの地に根を張って商いを続けています。

空間に並ぶのは、岩手にまつわる衣服はもちろんのこと、ファッションの都・パリや東洋の風を感じるインドをはじめとする世界各地から集めた「土地の物語」を感じる衣服、靴、帽子、アンティークや民族雑貨です。

自然への畏敬の念と、物への慈しみの眼差し。kuneは、先人たちが築いてきた精神を受け継ぎながら、かつての菊地とJAN-JAN VAN ESSCHE氏の会話がそうであったように、世界各地の先人たちがそれぞれの風土の中で脈々と築いてきた豊かな文化に出会う、「文化の交流地点」でありたいと考えています。

花巻南温泉郷 – 今も昔も変わらぬ湯治文化

奥羽山脈の中腹、クウネの位置する花巻南温泉郷は四季の変化が驚くほど鮮明で、自然の恩恵である温泉の種類の多さが魅力です。

源泉かけ流しの温泉に浸かり銀色の雪景色を眺める。花巻南温泉郷は数百年も前から、日本屈指の「湯治(とうじ)」の文化が根付く場所です。「湯治(とうじ)」とは、身体仕事が主になる農家の方々が農閑期(仕事が落ち着く冬の季節)に長い期間温泉に泊まり込みながらじっくりと身体を癒すというものでした。

今でもその名残が残っており、大沢温泉や藤三旅館には「湯治部」というお部屋が存在します。「湯治部」は基本的には素泊まりで、自分で持ち込んだ食べ物を共同のお台所で料理する自炊スタイルです。

厳しい冬の寒さを養分に香り強い採れたての春の山菜や落葉樹の肥えた土壌の元で育つふくよかな秋のキノコ、夏の渓流で釣れる川魚など、花巻南温泉郷では食の豊かさを自然を眺めながら身近に味わうことができます。シーズンになると産直「道の駅 はなまき西南」などでも購入することができますので、道中に食材を調達して素泊まりで自炊するというなんとも贅沢な楽しみ方もできます。言わずもがな、温泉で出される料理も四季折々別格です。

お料理が四季と共に移ろうようにkuneの店内にある衣服や雑貨もまた季節に寄り添う形で旬のものが並びます。

600年続く秘湯 – 藤三旅館

kuneからの最寄りの温泉は、「藤三旅館」です。開湯600年の歴史を持ち、温泉遺産にも認定されている名湯です。名物は日本一深いと言われる天然岩風呂の「立ち湯」で、足元から自噴する源泉に浸かり、全身に心地よい湯圧を感じる体験はここならでは。セルフロウリュスタイルのサウナや、渓流露天風呂など種類も豊富です。日帰り入浴も可能で、温泉に入るついでにとお店に立ち寄って下さる方も多くいらっしゃいます。

旅館から散歩がてら赤い橋を渡り、徒歩5分。川のせせらぎや鳥の声を聞きながらkuneへ向かう道中も日本の原風景のような景色を楽しめます。

風情あるしつらえを楽しむ – 大沢温泉

古い建物や日本の古き良き温泉旅館がお好きな方は、「大沢温泉」もオススメです。

築200年を超える茅葺屋根の温泉旅館で、春から秋までは半露天風呂の大窓が開放され、風の心地よさに思わず長風呂をしてしまいます。まるで額縁に飾られる今しか味わえない絵画のようです。使い込まれた建築や道具が持つ雰囲気を肌で感じることができ、日帰り利用も充実しています。

お食事処「やはぎ」で歴史ある木造建築の風情を楽しみながらいただく昼食も味わい深いです。特にオススメなのは岩手の郷土料理「ひっつみ定食」。小麦粉を練った生地を薄く引きちぎり(ひっつむ)、鶏肉、根菜、きのこなどが入った醤油ベースの汁に入れて煮込んだものです。うどんとは違い、手で生地をちぎるからこそ生まれるツルっと不均一な食感がやみつきになります。その土地に根付く料理を食べて旅の充実感も増しますね。

入り口から入ってすぐの場所には低い和テーブルに扇風機となかなか風情のある休憩室もあります。和室に寝っ転がって本を読みたい方にオススメです。日本心くすぐられる見た目ですよ。

かつては農家の方々の文化であった「湯治」も形を変えていつの時代でも人々を癒し続けているようで、現代ではデジタルデトックスをしたいという目的で湯治が人気なのだそうです。必要最低限のものが並ぶ心地よい簡素な室内で一人で静かに過ごし、源泉の湯に浸かり自然の音や香り、味覚に触れる。現代の私たちがふと気を抜くと忘れてしまうような体験が花巻南温泉郷にはあるのではないでしょうか。心と身体をほぐして「素」に戻れる。そんなゆっくりと歩くような早さの時間が自然豊かな花巻南温泉郷には流れています。

東北の文化を辿る旅へ

花巻南温泉郷を通る12号線は、雪のない季節(5月中旬以降)には秋田県へと抜ける道でもあります。発酵文化を探求する湯沢の「ヤマモ味噌醤油醸造元」さんを訪ねたり、日本3大盆踊りとも称される8月の「西馬音内盆踊り」へ足を伸ばしたり。

9月には地元の「花巻祭り」が開催され、郷土芸能である鹿踊りのように自然と人が共生する力強い文化を間近に見て感じることもできます。県境を越え、東北や岩手の深い文化を辿る旅の道中にも、ぜひお立ち寄りください。

Access & Information

最後にkuneまでのアクセスの仕方をお伝えできればと思います。

お車でお越しの場合

花巻南ICより約20分 / 花巻駅より約25分 / 新花巻駅(新幹線)より約35分

駐車場:店舗標識付近、または「P」看板のあるスペース(3〜4台)

バスでお越しの場合

花巻駅より岩手県交通バス「鉛温泉」下車、徒歩約10分(事前の時刻確認をお勧めします)
※バスの本数は少ないため、事前の時刻確認をおすすめします。( 平日詳細 土日祝詳細

電車でお越しの場合

JR「花巻駅」から車で約25分
JR「新花巻駅」(東北新幹線 利用時)から車で約35分 ※東京からお越しの場合はこちらになります。

営業日

土・日・月・火・祝(10:00 – 18:00)

四季折々の自然豊かな借景と共にご来店お待ちしておりマス

温泉に浸かり、土地の空気を吸い、ゆっくりと衣服に触れる。そんな一日の断片としてお立ち寄りいただければ幸いです。

今回のジャーナルには書ききれないオススメしたい場所やお店が沢山あるのですが、続きは店頭でお好みを聞きながらご紹介できればと思います。縁側の窓から見える四季折々の借景と共に、皆様のご来店を心よりお待ちしておりマス。

店主 照井

ONLINE STORE
VISION OF FASHION(V.O.F)(SELECT BRAND)
VISION OF FASHION ARCHIVE (ARCHIVE)

Instagram
乙景(京都)
CONTEXT TOKYO(東京)
kune(岩手)
VISION OF FASHION
ARCHIVE OF FASHION

衣服買取
V.O.Fでは”衣服消費の健全化”をMISSIONに掲げ、リユース商材を仕入れて販売するほか、着られなくなった洋服の買取やアップサイクルプロジェクトに取り組んでおります。不要になりましたお洋服があれば、ぜひ一度ご相談ください。買取サービスについては コチラ から。